What is the Blackcurrant?
ブラックカラントは、ブルーベリーやラズベリーなど、ベリー(多肉質の小果実の総称)の一種で、日本ではカシスという名称がよく使用されています。「カシス」は仏名で、「ブラックカラント」は英名です。
いくつかの名称がありますが、当サイトでは、国際ブラックカラント協会(IBA)と同じくブラックカラントと表記します。
基本情報
名称
英名 | Blackcurrant(ブラックカラント) |
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仏名 | Cassis(カシス) |
和名 | クロスグリ(黒酸塊)、クロフサスグリ(黒房酸塊) |
学名 | Ribes nigrum スグリ科スグリ属 |
概要
- 植物分類
- ユキノシタ目スグリ科スグリ属(2009年に公表された分類(APG III)による)
ベリーの仲間に、ブルーベリー(ツツジ科)、ラズベリー(バラ科)、ブラックベリー(バラ科)、ストロベリー(バラ科)などがあります。 - 原産
- ヨーロッパの温帯地方、西・中央アジア、ヒマラヤが原産といわれています。
- 特徴
ブラックカラントは、高さ1.5m程度の落葉の低木で、通常は果実が食用とされますが、種や葉も食用に用いられます。
果実は濃紫色*1で、直径は1cm程度、果肉は甘酸っぱく、夏季に収穫します。*1 果実に含まれるアントシアニンに基づく色です。
生産と輸入状況
生産
- 日本
- 国内のブラックカラント生産は、1979年青森で開始され、2012年の国内生産は10.8トンです。
そのうちの約7割の7.2トンが青森県で生産されました。青森県ではブラックカラントをブランド化するなど、その振興に力を注いでいます。 - 世界
- ヨーロッパとロシアが世界のブラックカラント生産の中心です。ロシアは含まれていませんがIBAのデータでは2013年の世界のブラックカラント生産量は21.6万トンです。ヨーロッパがその大部分の19.8万トンを占め、その内訳として10.5万トンがポーランドで生産されました。ニュージーランドは8400トンですが、質の高いブラックカラントが生産されています。
日本への輸入状況
日本の貿易統計では2013年に生果ブラックカラントが17.5トン、またブラックカラント単独ではありませんが冷凍ベリー類としては2902トンが輸入されています。国内需要の多くが輸入品で賄われています。
歴史と用途
ブラックカラントは16世紀後半から17世紀にかけて活躍したスイスの植物学者ガスパール・ポアンによって食用になることが紹介されたようです。当時の医療としては天然の産物の中から薬的な効果がありそうなものを見つけ出し、薬草等として病気の予防や治療に用いることが一般的でした。そんな中でブラックカラントもこのような利用が期待され積極的に用いられるようになりました。
またブラックカラントは収穫後劣化が進みやいので乾燥品やジャム、リキュール(果実酒)などに加工して用いられました。特にリキュールはもともと薬草の抽出物等を加えることによって保存が効きいつでも必要な時に使える貴重な民間薬としての役割がありました。ブラックカラントのリキュールは修道院の活動を通じて、身体の健康の維持に役立つものとして広く認識されるに至りました。現代でも「クレーム・ド・カシス」と言う名称のリキュールは特に有名です。
すなわちブラックカラントはヨーロッパで単なる食用のみならず経験的に身体に良いものとして知られるようになり、いわゆる民間薬としても使用されてきました。具体的には目に良いとして、目の障害を防ぐのに用いられたり、壊血病予防にも用いられました。ブラックカラントは昔から人々の健康の維持に貢献してきた有用な果実であると言えます。
有用な成分と注目される機能性
有用な成分
昔から経験的に民間薬として用いられていたブラックカラントですが今では化学的に分析され十分な根拠のあることが判っています。
ブラックカラントにはポリフェノールとして多量のアントシアニンが含まれるほか、ビタミンやミネラルなど有用な機能性を発揮する成分が豊富に含まれることが明らかになっています。下記はニュージーランド産ブラックカラントの例です。なおこれらの成分や含有量は産地や生育環境によって大きく変化する事があります。
- ■アントシアニンとして次の4種の成分が含まれます。
()内はそれぞれの成分の構成比率です。
デルフィニジン-3-ルチノシド(40%)
シアニジン-3-ルチノシド(41%)
デルフィニジン-3-グルコシド(11%)
シアニジン-3-グルコシド(6%)
- ■ビタミン類として次の成分が含まれます。
大量のビタミンC、適量のビタミンB1、B3、ビタミンA - ■ミネラル類として次の成分が多く含まれます。
カリウム、カルシウム、鉄分、亜鉛など
注目される機能性
ブラックカラントは他の果実や食品に比べてアントシアニン、ビタミンC、ミネラルなどが豊富に含まれており、これらの成分が協調して複合的かつ相乗的な抗酸化機能を幅広く発揮することが期待されます。
このような機能性は多くの研究者から注目されており、ブラックカラントの成分が身体の健康の維持・増進に与える影響が様々な観点から研究されています。
IBAが主催する国際ブラックカラント学会ではその成果の一部が報告されています。
今後このサイトではブラックカラントの機能性に関する報告等を紹介していく予定です。